· 

民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令

 改正相続法では、遺産分割前に、家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策として、各共同相続人は遺産に属する預貯金債権のうち各口座ごとに以下の計算式で求められる額までについては,他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができると定められました(新民法909条の2)。

 

【計算式】
 単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

 

  もっとも、  同一の金融機関に対する権利行使は「法務省令で定める額」を限度とするとされています。

 

 この同一の金融機関の限度額について「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額は、百五十万円とする。」との法務省令案が示されパブリックコメントに付されていましたが、原案通りで公布がなされました(「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令案」に関する意見募集の結果について)。150万円を限度額と定めた理由については「「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令案」に関する概要説明」に示されています。

 

【新民法909条の2】

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第909の2

 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。