各論4(争点整理手続き等)
第1. 弁論準備手続について
弁論準備手続においてウェブ会議,テレビ会議又は電話会議を利用するため には,現行法では当事者の一方が現に期日に出頭していることが要件とされて いるが(一方当事者出頭要件),これを廃止し,当事者双方が不出頭でも利用 できるようにすること(法第170条第3項ただし書を削除すること)につい て,どのように考えるべきか。
【現行民事訴訟法】
第二款 弁論準備手続
(弁論準備手続における訴訟行為等)
(音声の送受信による通話の方法による手続)
第54条
1.家庭裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者 の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、家庭裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、家事審判の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。
(音声の送受信による通話の方法による手続)
第47条
1.裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、非訟事件の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。
2.非訟事件の手続の期日に出頭しないで前項の手続に関与した者は、その期日に出頭したものとみなす。
【民事訴訟規則】
第二款 弁論準備手続
(弁論準備手続調書等・法第百七十条等)
第88条
1.弁論準備手続の調書には、当事者の陳述に基づき、法第百六十一条(準備書面)第二項に掲げる事項を記載し、特に、証拠については、その申出を明確にしなければならない。
2.裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって弁論準備手続の期日における手続を行うときは、裁判所又は受命裁判官は、通話者及び通話先の場所の確認をしなければならない。
3.前項の手続を行ったときは、その旨及び通話先の電話番号を弁論準備手続の調書に記載しなければならない。この場合においては、通話先の電話番号に加えてその場所を記載することができる。
4.第一項及び前項に規定するほか、弁論準備手続の調書については、法第百六十条(口頭弁論調書)及びこの規則中口頭弁論の調書に関する規定を準用する。
第六編 少額訴訟に関する特則
(音声の送受信による通話の方法による証人尋問・法第三百七十二条)
第226条
1.裁判所及び当事者双方と証人とが音声の送受信により同時に通話をすることができる方法による証人尋問は、当事者の申出があるときにすることができる。
2.前項の申出は、通話先の電話番号及びその場所を明らかにしてしなければならない。
3.裁判所は、前項の場所が相当でないと認めるときは、第一項の申出をした当事者に対し、その変更を命ずることができる。
4.第一項の尋問をする場合には、文書の写しを送信してこれを提示することその他の尋問の実施に必要な処置を行うため、ファクシミリを利用することができる。
5.第一項の尋問をしたときは、その旨、通話先の電話番号及びその場所を調書に記載しなければならない。
6.第八十八条(弁論準備手続調書等)第二項の規定は、第一項の尋問をする場合について準用する。
現行法では弁論準備手続においてウェブ会議・テレビ会議・電話会議を行うためには、少なくとも当事者の一方が裁判所に現実に出頭していることが求められています(民訴法170条3項ただし書)。もっとも、家事審判や非訟事件の手続期日では当事者双方が不出頭の手続期日が認められています。
研究会資料では、IT技術の発展を踏まえると当事者双方が不出頭の期日においてもある程度臨場感をもったやり取りが可能であり、当事者の便宜や簡易迅速な争点整理の必要性に鑑み、双方不出頭の弁論準備手続期日を許容することが提案されています。また、現行民訴法170条3項本文の「当事者が遠隔の地に居住しているとき」という文言を削除し、裁判所が「相当と認めるとき」とすることが提案されています。
民事訴訟の審理の形骸化を防ぐ観点からは、出頭を希望する当事者については原則通り出頭が認められることは確認される必要があると思われます。