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民事執行法改正法が成立

 民事執行法改正法(民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律)が令和元年5月10日に参議院で可決成立いたしました。

 ・民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案(法案提出時)

法律案要綱

法律案

理由

新旧対照条文

 【参考】法制審議会民事執行法部会

 

 衆議院では以下の附帯決議がなされています。

 民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 第三者からの情報取得手続に関し、金銭債権についての強制執行の実効性を確保する観点から、以下の事項について留意すること。
  1 本法施行後における第三者からの情報取得手続に関する実務の運用状況を勘案し、第三者から情報の提供を求めることができる債務者財産の範囲やその申立ての要件などについて、必要に応じて検討するよう努めること。
  2 債務者の給与債権に係る情報の取得ができる「生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権」について、本法施行後における実務の運用状況を勘案し、その他の損害賠償請求権を含め債務者の給与債権に係る情報の取得ができる損害賠償請求権の範囲について、必要に応じてその見直しを検討するよう努めること。
 二 不動産競売における暴力団員の買受け防止に関し、本法施行後における実務の運用状況を勘案し、競売手続の円滑性を確保しつつその実効性を図るため、必要に応じて更なる対策について検討するよう努めること。
 三 国内の子の引渡しの直接的な強制執行に関し、子の福祉の観点から、以下の事項について留意すること。
  1 子の引渡しの直接的な強制執行については子の心身に有害な影響を及ぼさないよう、本法施行後における運用状況を勘案し、必要に応じて更なる改善を図るよう努めること。
  2 執行裁判所や執行官の責務として、当該強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮する義務規定を設けた趣旨を踏まえ、子の引渡しを実現するに当たり、執行補助者として児童心理学の専門家等を積極的に活用できるようにするため、当該専門家等の確保のための方策を講じるよう努めること。
  3 執行官に女性がいない現状を踏まえ、女性の登用の在り方などを検討するとともに、執行補助機関である執行官の負担が増大することを考慮し、執行官の適正な職務の環境整備や個々の執行官の質の更なる向上を図るための研修の充実など執行官制度の基盤の更なる整備を行うよう努めること。
 四 差押禁止債権の範囲変更の制度に関し、債務者の財産開示制度の見直しにより、債権者の地位の強化が図られることに鑑み、以下の事項について留意すること。
  1 差押禁止債権の範囲変更の制度をより適切に運用することができるよう、裁判所書記官の教示に当たってはその手続を分かりやすく案内するとともに専門家による支援を容易に得られるようにするなど、債務者に配慮した手続の整備に努めること。また、これらについて、本法施行後における運用状況を勘案し、必要に応じて更なる改善を図るよう努めること。
  2 給与債権の差押禁止の範囲の定めに関する諸外国における法制度や運用状況に関する調査研究を実施し、必要に応じて、我が国において給与債権の差押禁止の最低限度額の定めを設けることの是非を含め、我が国における法定の差押禁止の範囲についての見直しを検討するよう努めること。
 五 国際的な子の返還の代替執行が子の心身に与える負担を最小限にとどめる観点から、本法施行後における国際的な子の返還の代替執行に関する実務の運用状況を注視し、必要に応じて更なる改善を図るよう努めること。
 六 公的機関による養育費や犯罪被害者の損害賠償に係る請求権の履行の確保に関する諸外国における法制度や運用状況に関する調査研究を実施し、我が国におけるそれらの制度の導入の是非について検討を行うよう努めること。

 

 参議院においても以下の附帯決議がなされています。

 

 民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を

改正する法律案に対する附帯決議

令和元年五月九日

参議院法務委員会

 政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

一 第三者からの情報取得手続に関し、金銭債権についての強制執行の実効性を確保する観点から、以下の事項について留意すること。

1 近年における夫婦の離婚後の養育費の支払率が改善されていない現状を踏まえ、子の福祉に資するため、養育費が適切に支払われるよう、本法施行後における第三者からの情報取得手続に関する実務の運用状況を勘案し、第三者から情報の提供を求めることができる債務者財産の範囲やその申立ての要件などについて、申立人の制度の利用のしやすさを考慮し、必要に応じて検討するよう努めること。

2 債務者の給与債権に係る情報の取得ができる「生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権」について、本法施行後における実務の運用状況を勘案し、その他の損害賠償請求権を含め債務者の給与債権に係る情報の取得ができる損害賠償請求権の範囲について、必要に応じてその見直しを検討するよう努めること。

二 不動産競売における暴力団員の買受け防止に関し、本法施行後における実務の運用状況を勘案し、競売手続の円滑性を確保しつつその実効性を図るため、必要に応じて、刑事罰による虚偽陳述の抑止以外の更なる対策について検討するよう努めること。

三 国内の子の引渡しの直接的な強制執行に関し、子の福祉の観点から、以下の事項について留意すること。

1 子の引渡しの直接的な強制執行については子の心身に有害な影響を及ぼさないよう、本法施行後における運用状況を勘案し、必要に応じて更なる改善を図るよう努めること。

2 執行裁判所や執行官の責務として、当該強制執行が子の心身に有害な影響を及ぼさないように配慮する義務規定を設けた趣旨を踏まえ、子の引渡しを実現するに当たり、執行補助者として児童心理学の専門家等を積極的に活用できるようにするため、当該専門家等の確保のための方策を講じるよう努めること。

3 執行官に女性がいない現状を踏まえ、女性の登用の在り方などを検討するとともに、執行補助機関である執行官の負担が増大することを考慮し、執行官の適正な職務の環境整備や個々の執行官の質の更なる向上を図るための研修の充実など執行官制度の基盤の更なる整備を行うよう努めること。

四 差押禁止債権の範囲変更の制度に関し、債務者の財産開示制度の見直しにより、債権者の地位の強化が図られることに鑑み、以下の事項について留意すること。

1 差押禁止債権の範囲変更の制度をより適切に運用することができるよう、裁判所書記官の教示に当たってはその手続を分かりやすく案内するとともに専門家による支援を容易に得られるようにするなど、

債務者に当該制度が周知されていない現状を改め、債務者に配慮した手続の整備に努めること。また、

これらについて、本法施行後における運用状況を勘案し、必要に応じて更なる改善を図るよう努めるこ

と。

2 給与債権の差押禁止の範囲の定めに関する諸外国における法制度や運用状況に関する調査研究を実施し、必要に応じて、我が国において給与債権の差押禁止の最低限度額の定めを設けることの是非を含め、我が国における法定の差押禁止の範囲についての見直しを検討するよう努めること。

五 国際的な子の返還の代替執行が子の心身に与える負担を最小限にとどめる観点から、本法施行後における国際的な子の返還の代替執行に関する実務の運用状況を注視し、必要に応じて更なる改善を図るよう努めること。

六 公的機関による養育費や犯罪被害者の損害賠償に係る請求権の履行の確保に関する諸外国における法制度や運用状況に関する調査研究を実施し、我が国におけるそれらの制度の導入の是非について検討を行うよう努めること。

七 近年、面会交流、監護者の指定、婚姻費用の分担など家庭裁判所における離婚に関わる調停・審判などの家事事件の件数が増加傾向にある現状を踏まえ、家庭裁判所が丁寧な審理を行えるよう、その体制の整備について検討すること。

 

右決議する。