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商品関連市場デリバティブと不招請勧誘禁止について(メモ)

商品先物取引法2149号は、商品先物取引業者が訪問や電話により個人顧客を勧誘すること(不招請勧誘)を原則禁止しています(なお同法施行令30条・例外:同法施行規則102条の21号ないし3号)。

 

 ところで今般、総合取引所(大阪取引所)にエネルギー関連商品とコメを除く商品が移管され、商品関連市場デリバティブは金融商品取引法により規制されることとなりました(日本取引所「総合取引所の実現について -Commodity is mine-)」)。

 

 金融商品取引法においても不招請勧誘禁止の規定がありますが(同法4号)、規制の対象は店頭金融先物(同法施行令16条の411号イロハ)及び暗号資産関連店頭デリバティブ取引(同号ニ)と個人である顧客を相手方とする店頭デリバティブ取引全般(同法施行令16条の412号)だけであり、「市場デリバティブ」は不招請勧誘禁止の対象とされていません。

 

 もっとも金融商品取引法385号は市場デリバティブ取引を含めて、勧誘に先立って、顧客に対し、その勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘をすることを義務付けています(勧誘受諾意思確認義務)。

 

 そして金融商品取引業等に関する内閣府令11718号の2は、個人である顧客に対する商品関連市場デリバティブ取引の勧誘に先立って、その勧誘を受ける意思を確認する際に、訪問し又は電話をかけること(イ)、勧誘する目的があることをあらかじめ明示しないで顧客を集めること(ロ)を原則禁止しています。

 

 結論的には、勧誘受諾意思確認のための方法として訪問又は電話をかけるが禁止されることで実質的に不招請勧誘禁止が実現していると言えます。

 

 なお、当該金融商品取引業者等に有価証券の取引又はデリバティブ取引を行うための口座を開設している者及び当該金融商品取引業者等と商品取引契約を締結している者に対する商品関連市場デリバティブの勧誘は許容されていますが、この例外は、商品先物取引法施行規則102条の2の例外規定よりも狭いと思われます。

 

 

 商品先物取引被害のきっかけは不招請勧誘にはじまることが多かったことから商品先物取引法は不招請勧誘を法律事項として禁止しました。もっともその同法施行規則による緩和が問題となりました(国民生活センター「存じですか?商品先物取引の勧誘ルールが変わります!-勧誘を受けても、取引の仕組みやリスクの大きさを理解できなければ契約しないで!-」)。

 総合取引所のもとでの商品関連市場デリバティブについて金融商品取引法は直接法律事項として不招請勧誘禁止の対象としていませんが、勧誘受諾意義確認義務のプロセスにおいて業府令において実質的に同様の規制を実現するという構図となっております。法が直接不招請勧誘を禁止することと比べるとメッセージ性が弱まる感もありますが、金融商品取引法は不招請勧誘禁止の対象を、現時点では「店頭」デリバティブに限定している中で、商品関連についての「市場」デリバティブについて「訪問」「電話」による不招請勧誘を実質的に禁止する工夫とも言えると思われます。今後、総合取引所のもとでの商品関連市場デリバティブの不招請勧誘禁止が弛緩しないか注意が必要です。あわせて、金融商品取引法における不招請勧誘禁止の対象を拡充していくことも必要でしょう。