政府が、海外IT大手に登記順守を要請した旨の報道がなされています。
【日本経済新聞】政府、海外IT大手の監視強化 登記順守を要請 グーグルやメタ対象 利用者、訴訟容易に
【朝日新聞】海外法人の登記、巨大IT企業に一斉要請 規定徹底を求める
【毎日新聞】政府、海外IT大手に本社登記要請
【共同通信】政府、IT大手に本社登記を要請 事業実態把握へ監視強化
当職も大手ITが運営する電子マネーが悪質商法に悪用された事案で、チャージバック要請など問い合わせをする責任主体の把握に苦労をしたことがあります。クレジットカード会社も情報開示はしてくれませんでした(チャージバックは実現しました)。関連する日本法人は存しても、国内で展開する事業とは無関係であるとして、海外の拠点に問い合わせることを求められました。
会社法は外国会社が日本において継続して取引をしようとするときは、日本における代表者を定め(うち一人以上は日本に住所を有する者)(会社法817条1項)、外国会社の登記を求めています(会社法818条1項)。外国会社の登記義務に違反した場合には過料の制裁もあります。
【参照:法務省】外国会社の登記を忘れていませんか?
日弁連は、2020年12月18日付けで、「実効的な発信者情報開示請求のための法改正等を求める意見書」を取りまとめ、同日付けで総務大臣及び法務大臣宛てに提出していますが、その中では「国は、会社法第933条第1項第1号の定める外国会社登記における代表者登記義務の履行を徹底させる運用をすべきである」こと、「国は、特定電気通信役務提供者に令和2年改正後の電気通信事業法により国内における代表者又は代理人が置かれる場合には、当該特定電気通信役務提供者に対する訴状等の送達に関しては、運用上、電気通信事業法上の国内における代表者又は代理人に対する送達を認めるべきである」ことを求めていました。
大手ITは、今や社会に大きな影響を与えるインフラとなっていますが、日本国内の利用者が日本国内で被害救済を迅速に得ることができるように、まずは日本国内における責任主体が明確化されるよう、登記義務という法令遵守を速やかに実行することが求められます。