鳥栖市立中学校いじめ後遺症訴訟は残念ながら最高裁が令和4年7月12日付で上告不受理決定をし,福岡高裁判決が確定することとなりました。
「いじめ」という言葉では収まらない凄惨な暴力などにより,被害生徒は今も重いPTSDに苦しんでいます。他方で,当初は犯罪に等しいとした鳥栖市教育委員会は,訴訟においては,いじめは存在しない,と態度を一変させ,被害者生徒・家族を更に苦しめました。そして,一審佐賀地裁判決は,加害生徒が認めたいじめの事実のみ個別に認定し,2名の加害生徒等に損害賠償を認めたものの,学校の責任は否定しました(PTSDは認定しています)。控訴審である福岡高裁は加害生徒5名による継続的いじめ行為を認定し,また文科省のいじめ対策・いじめ早期発見のための通達が教師の知見であるとしながら,なぜかあてはめにおいて,いじめを発見できなかった(見て見ぬ振りをした)教師の責任を否定し,また主治医や専門医のPTSDの診断があり,特段の反証がないにも関わらず,PTSDを否定しました。福岡高裁判決の学校の安全配慮義務やPTSD認定については重大な法律解釈の誤りがあるとして最高裁に上告をし,また,被害生徒は一審判決後,実名をあげて闘ってきましたが,残念ながら上告不受理となりました。弁護団長の渡部吉泰弁護士が死去された直後の不受理決定でした。
もっとも中学校入学後から継続的に凄惨ないじめ行為があったことは福岡高裁判決が認定しており,法的責任はともかく,担任教師や学校は凄惨ないじめを早期に発見し,被害生徒を守ることができなかったことは事実です。なぜいじめを発見できなかったのか,また,訴訟においてはいじめを否定する主張を行い被害者生徒保護者を更に苦しめたのかなど再検証が必要です。
今後は,第三者委員会などによる調査を鳥栖市(教育委員会)に求めていくこと,また,被害者生徒・保護者の平穏な生活を確保することを求めていくことになります。
最高裁では,学校のいじめ発見義務について積極的な判断を仰ぎたかったところであり,この不受理決定は非常に残念です。いま,この瞬間も凄惨ないじめに苦しんでいる児童・生徒らのためにも,司法はいじめ対策防止法の趣旨にのっとり積極的に学校の安全配慮義務について審理をしていくべきです。