最判平成22年12月2日は「構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権は,譲渡担保権者において譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産(以下「目的動産」という。)の価値を担保として把握するものであるから,その効力は,目的動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶと解するのが相当である」として、保険金債権への物上代位を肯定しています。
もっとも同判決は「構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保契約は,譲渡担保権設定者が目的 動産を販売して営業を継続することを前提とするものであるから,譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合には,目的動産の滅失により上記請求権が発生したとしても,これに対して直ちに物上代位権を行使することができる旨が合意されているなどの特段の事情がない限り,譲渡担保権者が当該請求権に対して物上代位権を行使することは許されないというべきである」とし「通常の営業を継続している場合」の物上代位は原則として否定しています。
同判決の事案では、担保権者が本件共済金請求権の差押えを申し立てた時点においては,設定者は目的動産である本件養殖施設及び本件養殖施設内の養殖魚を用いた営業を廃止し,これらに対する譲渡担保権が実行されており、本件譲渡担保権の目的動産を用いた営業を継続する余地はなかったことが前提事実となっています。