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集合動産譲渡担保と動産売買先取特権(最判昭和62年11月10日)

 最判昭和62年11月10日構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶことを前提に、「動産売買の先取特権の存在する動産が右譲渡担保権の目的である集合物の構成部分となつた場合においては、債権者は、右動産について も引渡を受けたものとして譲渡担保権を主張することができ、当該先取特権者が右 先取特権に基づいて動産競売の申立をしたときは、特段の事情のない限り、民法三三三条所定の第三取得者に該当するものとして、訴えをもつて、右動産競売の不許を求めることができるものというべきである。」として動産売買先取特権に優先するとの判断を示しています。

 民法333条は「先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。」と定めています。同判決は、この場面においては譲渡担保について「所有権的構成」を取っているようにも読めます。なお、先取特権と動産質権の競合について民法334条は「先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第330条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。」と定めており、動産譲渡担保権についても民法334条を類推して処理すべきとの考え方もありうるところです。