DGSW ポンプトリップによって D/G がトリップすること

 福島第一原子力発電所の津波による 非常用交流電源喪失についての追加検討(東京電力ホールディングス株式会社 山内 大典他,日本原子力学会誌VOL59,NO11(2017))によると,2号機A系は「DGSW ポンプがトリップする と,ポンプ吐出圧低信号により 60 秒後に D/G ロックアウトリレーが動作し,D/G の遮断器が開放する」「DGSW ポ ンプトリップにより D/G がトリップし,A 系の電源が失われた可能性が高い」とある。

 東京電力作成「添付資料地震津波-2 津波による非常用交流電源喪失についての追加検討」にも同趣旨の記載がある。更に3号機B系についても「2号機A系と 同じく、DGSW ポンプトリップもしくは浸水により D/G 制御盤内の端子が通電し、D/G ロックアウトリレーが動作したものと考えられる」とある。 5号機A系・B系も「2号機 A 系、3号機 B 系と同じく、DGSW ポンプトリップもしくは浸水により D/G 制御盤内の端子が通電し、D/G ロックアウト リレーが動作したものと考えられる」とある。政府事故調査報告書中間報告でも6号機A系及びHPCS用については・・・非常用DGの被水は免れた。しかし、非常用DGの冷却に必要な冷却用海水ポンプが被水したことから機能を喪失したと推認できるとある(29頁)。

 他の空冷式を除く非常用ディーゼル発電機は先に別の要因で機能喪失してはいるが,DGSW(非常用ディーゼル発電機用海水ポンプ)の浸水によるトリップにより,いずれにしても機能喪失することになったはずである。

 なお最判令和4年6月17日の草野裁判官補足意見でも「なお、非常用電源については、本件仮定津波の到来に伴い、水冷式非常用ディーゼル発電機は海抜4mの海側エリアに設置されていた冷却水くみ上げポンプの水没によりその機能を失い、空冷式非常用ディーゼル発電機(6号機のものを除く。)も、本件仮定津波の本件敷地への流入箇所に近い運用補助共用施設(共用プール)の地下に設置されていた付属の高圧電源盤の浸水によりその機能を失った可能性が高いので、6号機を除く全 ての本件各原子炉施設が非常用電源を喪失していた可能性が高い」としている。

 4メートル盤の浸水により,水冷式非常用ディーゼル発電機は機能を失うことは当然視されていた。

 仮に東電平成20年試算を基に技術基準適合命令が発せられた場合に1号機から6号機までの水冷式非常用ディーゼル発電機の機能を同時に全て奪いかねない4メートル盤の浸水対策をしないまま南側のみ防潮堤だけの対策で国が技術基準適合確認をし,再稼働を許容したとは考えられない(地元同意も得られないであろう)。この場合,東京電力は4メートル盤の浸水対策をどのように行ったのか,それにより3.11津波の低減効果がどのようになったのか更に審理は尽くされなければならない。4メートル盤の浸水は10メートル盤の浸水による直接的な非常用DGの機能喪失と同視されるのである。