昭和9年關西地方風水害調査報告

津波ディジタルライブラリィより】

土木学會關西地方風水害調査委員會「昭和9年 關西地方 風水害調査報告」に以下の記述がある。いわゆる室戸台風時の被害についてである。

 

3.火力發電所

火力發電所を海邊に設くることは石炭の運搬及冷却水の關係上止むを得ない事であるが,今囘の災害で高潮に對して充分考慮して置かねばならぬ事が明かになつた。對策としては次の事が考へられる。
(1)火力發電所の周圍には豫想高潮に對して充分安全なる堤防護岸を設くること。
(2)以上の堤防護岸の外火力發電所の主要部分に對しては船舶と同樣の防水的構造とすること(高潮の達する範圍が止むを得ざる場合は特殊の構造とし,海水の侵入,流材の衝撃等に備ふ)。
(3)出入戸には水密戸,兩室の隔壁には水密壁を用ふること。
(4)適當容量の排水ポンプを少くとも2臺設置すること。
(5)冷卻水ポンプ,電動機等を竪型とし可及的高位置に設置し操作用器具は之を階上に施設すること。」

2.神戸市

 被害状況 湊川火力發電所の導水路及沈砂池の被害(約500円),搬炭設備(700円),石炭陸揚場の岸壁上部約68m損壞(300円),その他附屬設備損害(500円),高潮侵入による屋根窓等の破損あり。
 被害金額(2000円)
 被害對策
(1)既設發電所には全然風水害を防止する施設は種々の困難を感ずるを以てなざず,只ある程度の漏水は止むを得ぬものと考へ只發電作業に支障を來さゞる程度に補修改良をなし豫備設備を施すことゝせり。
(2)高潮浸水に對しては發電所復水放棄溝出口際に鉄管を設置して逆流制止弁を取付け,又發電所出入口等には防潮壁を設け尚漏水せるものは地下室の凹所に導き排水喞筒にて排水するべく夫々喞筒を設備す。
(3)海岸附近又は海水面或は道路面より低き床面を有する發電所は1.5m以上の防水壁或は2.5m以上の防水堤を其の外廓に廻らし入口を防水扉となすこと。
(4)發電所出入口扉窓通風筒等を高潮及水圧,暴風雨,風圧に充分耐ゆる構造たらしむること。」

3.關西共同火力
 被害状況 尼ヶ崎火力發電所は高潮のため發電所内一階床面上2.75mの浸水,屋外変電所及貯炭場地面上1.75m浸水のため發電不能となり,被害は補助機用電動機,蓄電池計器用変成器及配電盤等なり。
 被害對策
(1)發電所建物一階窓を可成り上部に設け且水密式にすること。
(2)出入口の扉を水密式とすること。
(3)ケーブル ダクトより浸水を防止するためコムパウンド等により之を閉塞すること等を適當と認む。」