【ATOMICA原子力百科事典】わが国においてECCSが作動した事故・故障

 ATOMICA原子力百科事典に「わが国においてECCSが作動した事故・故障」として以下の5例が紹介されている。うち2例は福島第一原発2号機である。その際にはHPCIとRCICが同時に起動しているようである。

 

(1)1979. 7.14、関西電力(株)大飯1号機(PWR)

 定格出力運転中、「冷却材ポンプ遮断機トリップ」の誤信号が発生して、原子炉が自動停止した。さらに、主蒸気逃がし弁が作動して主蒸気管相互の圧力に不均衡が生じた結果安全注入信号が発信しECCSの一つである「高圧注入系」が作動した。
 しかし、系統から冷却水の流出はなかった。
(2)1981. 5.12、東京電力(株)福島第1−2号機(BWR)
 運転中、電源回路の自動切替え時に瞬断が生じたため、高圧復水ポンプ吐出圧力(低)の警報設定器が誤作動した。これにより、高圧復水ポンプが停止し、「原子炉水位低」の信号で原子炉が自動停止した。その後、所内電源切替え時に予備の高圧復水ポンプも停止して原子炉水位がさらに低下したため、ECCSの一つである「高圧注水系」と原子炉隔離時冷却系が作動した。
 ここでも、系統からの冷却水の流出はなかった。
(3)1981.11.19、東京電力(株)福島第2−1号機(BWR)
 試運転中、低圧復水ポンプに接続する弁を誤って開き、ポンプの吐出圧力が低下したため、高圧復水ポンプとタ−ビン駆動給水ポンプが停止して、「原子炉水位低」の信号で原子炉が自動停止した。その後さらに原子炉の水位が低下したためECCSの一つである「高圧炉心スプレイ系」と原子炉隔離時冷却系が作動した。
 ここでも系統からの冷却水の流出はなかった。
(4)1991. 2. 9、関西電力(株)美浜2号機(PWR)
 定格出力運転中、蒸気発生器の伝熱管が1本破断し「加圧器圧力低」信号で原子炉が自動停止した。これとともに、加圧器圧力低と加圧器水位低の二つの信号から安全注入信号が発信し、「高圧注入系」が作動した。
 この事故によって微量の放射性物質が一次冷却系統から主蒸気系統を通り放出されたが、周辺環境に対する放射能の影響はなかった。
(5)1992. 9.29、東京電力(株)福島第1−2号機(BWR)
 定格出力運転中、「原子炉水位低」の信号で原子炉が自動停止した。
 原因は、高圧復水ポンプの電源盤の点検作業の後、復帰操作を誤ったことが起因で、高圧復水ポンプ及びタ−ビン駆動給水ポンプが全て停止状態となったためである。
 原子炉停止後も、さらに原子炉水位が低下したため「高圧注水系」と原子炉隔離時冷却系が作動した。
 なお、系統からの冷却水の流出はなかった。