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令和5年金融商品取引法等改正

 令和5年11月20日(第212回国会)において金融商品取引法等の一部を改正する法律が成立しました。

【金融庁HP 第212回国会における金融庁関連法律案

 

 このうち「顧客本位の業務運営の確保」として

■最終的な受益者たる金融サービスの顧客や年金加入者 の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行すべきである旨の義務を、金融事業者や企業年金等関係者に対して幅広く規定

■顧客属性に応じた説明義務を法定するとともに、顧客への 情報提供におけるデジタル技術の活用に関する規定を整備

とあります。

 

 具体的には「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」(金サ法)にまず「第二章 顧客等に対する誠実義務」として以下の条文が定められました。

 

第2条1項

 金融サービスの提供等に係る業務を行う者は、次項各号に掲げる業務又はこれに付随し、若しくは関連する業務であって顧客…の保護を確保することが必要と認められるものとして政令で定めるものを行うときは、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない。

 

 これまで金融商品取引法36条1項に定められていた「金融商品取引業者等並びにその役員及び使用人は、顧客に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない」とする「顧客に対する誠実構成義務」の規定が「顧客等の最善利益勘案」を加えて金サ法に移設されたものです(金商法36条は削除:施行は1年後)。

 

 また、金融商品取引法の契約締結前・締結時の書面交付義務について、契約締結前の情報の提供等、契約締結時の情報の提供等の義務に改正されました。

 

【金商法】

(契約締結前の情報の提供等)
第37条の3 金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、顧客に対し、次に掲げる事項に係る情報を提供しなければならない。ただし、投資者の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定める場合は、この限りでない。
 当該金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名及び住所
 金融商品取引業者等である旨及び当該金融商品取引業者等の登録番号
 当該金融商品取引契約の概要
 手数料、報酬その他の当該金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき対価に関する事項であつて内閣府令で定めるもの
 顧客が行う金融商品取引行為について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずることとなるおそれがあるときは、その旨
 前号の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金その他内閣府令で定めるものの額を上回るおそれがあるときは、その旨
 前各号に掲げるもののほか、金融商品取引業の内容に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして内閣府令で定める事項
 金融商品取引業者等は、前項の規定による情報の提供を行うときは、顧客に対し、同項各号に掲げる事項(同項第五号及び第六号に掲げる事項その他内閣府令で定める事項を除く。)について、顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品取引契約を締結しようとする目的(以下この項において「顧客属性」という。)に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度により、説明をしなければならない。ただし、顧客属性に照らして、当該情報の提供のみで当該顧客が当該事項の内容を理解したことを適切な方法により確認した場合その他の内閣府令で定める場合は、この限りでない。
 <略>
(契約締結時等の情報の提供)
第37条の4
  金融商品取引業者等は、金融商品取引契約が成立したときその他内閣府令で定めるときは、内閣府令で定めるところにより、遅滞なく、顧客に対し、当該金融商品取引契約に関する事項その他の内閣府令で定める事項に係る情報を提供しなければならない。ただし、その金融商品取引契約の内容その他の事情を勘案し、当該情報を顧客に提供しなくても公益又は投資者保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。

 これまで業府令117条1号において「次に掲げる書面の交付に関し、あらかじめ、顧客…に対して、法第三十七条の三第一項第三号から第七号までに掲げる事項…について顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為」を禁止行為とすることにより説明義務を課していた規定を法定化するものと言えます(施行は1年半後)。

 その他、金サ法において「金融サービスの利用環境の整備等」として「安定的な資産形成の支援等」と「金融経済教育推進機構」についての規定が設けられ、金商法においてソーシャルレンディングや不動産特定共同事業契約についての規制の整備等もなされています。