実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則7条の4は「作業手順書等の遵守」として「第三十五条第一項の規定により、原子炉設置者は、保安規定に基づき要領書、作業手順書その他保安に関する文書(以下「作業手順書等」という。)を定め、これらを遵守ししなければならない。」と定めている。
保安規定の変更の際には,変更される保安規定に基づく作業手順書等が定められるはずであるし,保安規定の変更認可申請の際には,監督官庁は,作業手順書等の内容も精査した上で,「原子炉による災害の防止上十分でないと認めるとき」は認可をしてはならない。
平成22年6月14日に,SR弁からICの優先起動への変更が認可されているが,この変更に基づく事故時操作手順書の策定がなされていたのか,その変更が災害防止上十分になされているか,運転員に対する保安教育が十分なされているかと合わせて,審査した上で認可がなされたのか検証される必要がある。
仮に,従前通り,SR弁の優先起動設定であった場合には,3.11の際に1号機では非常用復水器が自動起動せずに,スクラム停止後はSR弁による減圧とHPCIによる水位回復がなされたはずであるし,ICの手動停止や起動状況の認識をめぐる混乱もなかったはずである。1号機は,RCICによる冷却が継続した2号機・3号機同様に,少なくとも12日午後に水素爆発する事態には至らなかった蓋然性が高い。