最大水位は【R9-06-02】なのか?


 東電平成20年計算では【R9-06-02】が最大ケースとされているが、2号機・3号機・4号機・6号・南護岸前では【R9-06-01】の方が高い水位が試算されている。すべり角が+10度の場合である。従って、朔望平均満潮位の場合の試算は【R9-06-01H】についても行わなければならない。そしてこの場合、わずかであっても【R9-06-02H】よりも【R9-06-01H】の方が2~4号機、6号機、南護岸前では高いことになる。

 令和4年6月17日判決は「本件試算は・・・上記断層モデルの諸条件を合理的と考えられる範囲内で変化させた数値計算を多数実施し、本件敷地の海に面した東側及び南東側の前面における波の高さが最も高くなる津波を試算したもの」とするがこの点においても誤りである。


 また、概略パラの段階で【R9-06】モデルが最大となっているが、少なくとも4号機は【R9-05】が最大である。さらには波源位置が【北側】(R9-01~3)よりも【やや北】(R9-04~06)が水位がおおむね高いが走向を+5度とした際の増加率は【R9-02】と【R9-03】の方が【R9-05】と【R9-06】よりも大きい。例えば1号機では【北側】では約1メートル35cmも増加している(走向が効いている)。【やや北】では増加は20cm程度である(走向があまり効いていない)。仮に土木学会2002に従って+10度に振った場合は【北側】が【やや北】を超す蓋然性が高い。もちろん【やや北】についても+10度に走向を振れば【R9-06】よりも更に水位は増加する。 

 なお、取水口前面と取水ポンプ位置での水位と1号機ないし4号機の10メートル盤岸前での水位も異なるはずである。

 なお、平成20年試算によっても1号機北側からの津波の浸水は存するようであり、そのため平成28年試算では1号機北側にO.P.+12.5メートルの防潮堤は設けることとなっている。1号機の水位が更に上昇するのであれば、対策としてのこの防潮堤の高さ・幅も更に拡げる必要がある。その結果、1号機タービン建屋大口搬入扉からの浸水も防ぐことができたのではないか。

 最判は「平成14年津波評価技術が示す設計津波水位の評価方法に従って、上記断層モデルの諸条件を合理的と考えられる範囲内で変化させた数値計算を多数実施し、本件敷地の海に面した東側及び南東側の前における波の高さが最も高くなる津波を試算した」とするが正しくない。

 【北側】と【やや北】の中間地点に波源を移動し、走向を+10度とするなど更なる試算をすべきである。南側のみ(及び1号機北側のみ)防潮堤を設置し、東側前面には防潮堤を設置しないという決断をする際には、更に精緻な水位計算が東電や国において行われた蓋然性が高いからである。福島原発国賠はまだまだ「審理不尽」である。